死んだ魚の目をして暮らしていた僕に、人生の転機が訪れたのは、2016年の春だった。

大学を卒業して以降、現代社会の流行りであるブラック企業に入社した。

転勤族として7年間ほど日本全国を転々としながら激務に耐えた僕は、身体も心もボロ雑巾のように弱っていた。

身体が思うように動かなくなった2015年の冬、僕は今まで積み上げてきた地位名誉の積み木を崩し、新しい土地で我が人生を再構築する決意を固めた。

たまたまペット飼育可の賃貸アパートを妻が見つけてくれて、とある雪国の街で新しい生活をすることが決まった。

妻のたっての願いで、猫を飼うこととなった。ただ、貧乏性の僕はペットショップで何十万もの高額な猫を飼うなど馬鹿げていると判断した。僕は、異常なまでの貧乏性なのである。

そして僕らは、タダで迷い猫を引き取ることを決めたのだった。これが悲劇と幸福の始まりだった。