名刀 彼の名は『こてつ』

ある日、僕は子猫を譲り受けた。猫の名は『こてつ』。爪と牙は血に飢えた日本刀のごとく鋭く、黒と茶の縞模様は悪魔を召喚する魔法陣のように規則正しい幾何学模様をなしている・・・!!!

カテゴリ: こてつの写真記事

僕は夏が好きである。
よく友人に笑われるのだが、夏のあの、物語が始まりそうな空気がなんとも好きなのである。

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夏はいい。
早朝は朝顔が黎明を浴びて必死に伸びていて、ラジオ体操に駆ける子供たちが見える。
昼は冷やし中華と麦茶で夏の味覚を堪能する。麦茶のコップについた水滴をはらって、
やっと出かける。
夕方はひぐらしの大合唱が赤い空に音符を泳がせる。背の高い林の真ん中にある神社に座ると、木陰の涼しさが心地よい。
夜は夏祭りが開催されている商店街へ浴衣姿が行列をなす。りんご飴だけでも買おうかな、なんて思って、こちらはジャージとティーシャツで出かける。虫よけスプレー、忘れずに。

今、冬ですけどね。
僕は夏が好きなんです!
写真はうちの飼い猫です。名前はこてつ君、初夏に拾われた0円猫です。
 

猫とは非常に奇妙な生き物で、とはいえ僕は猫を飼った経験がこのこてつ一匹しかいないのだが、猫の行動を縛ることは不可能に近く、不可能というより試みることすら禁忌なのではないかと思わせる何かが存在する。

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『猫は人を役に立つペットだと思っている』という誰かさんの名言にある通り、僕らは彼ら(猫ら)を縛ることはできないのだろう。
物理的に縛ろうと思えば、首輪でも鎖でもつければいい。
しかし、そんな束縛は愚行であると思わせる雰囲気が、猫の琥珀色の瞳から漏れ出し、部屋中の(はたまた世界中の)空気を満たしていく。その空気が夜風とともに世界中をめぐり、猫が所有する自由を保障しているのだと、僕は考える。

吾輩は猫である。名前はまだない状態だった彼は、幸運にも『こてつ』という立派な名を得ることができた。
生まれてまもなく、僕に拾われたからである。
猫も人間も、眠ることに快感を覚える生き物のようで、1日の半分はお気に入りのソファーで夢心地のこてつである。

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彼は我が家のカースト制を理解していないようで、自分が上位の地位にいる存在だと勘違いしている。鳴けば飯が出てくるものだと思っているし、眠るときはいくら邪魔になろうが人間の隣と決めているらしい。

これは由々しき事態である。
このまま育ってしまったら、成獣になったころには自分がこの家の王様だと勘違いしかねない。
その時は、無理やりにでも風呂に沈めて身も心も綺麗になってもらおうと思う。
そしたら、王族から出家した神父のような、一段と清らかで厳かな風格をまとうに違いない。


 

2016年6月、僕は彼を譲り受けた。
吾輩は猫である、名前はまだない状態だった彼は、この世に生を受けて1か月ほどであった。
僕は、彼の名前を『こてつ』と定めた。

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彼は望まれない命だった。
いや、そもそも猫の社会は人間界のように命を尊んだり、はたまた蔑んだりするという価値観は存在していないのであろうが、それでも彼の誕生を祝ったのは、おそらく母猫くらいのものだろうと思った。

決して 捨て猫というわけではなかった。
しかし、彼は兄弟とともに里親探しの1ページとして写真を掲載されていた。

僕の甲斐性では1匹が限界だった。
『こてつ』という名前に特別な意味はない。しかし名刀『虎鉄』を思わせる眼光の鋭さが印象的な初めての夜であった。

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